2023/4/8 佐渡裕×新日本フィル 「アルプス交響曲」
2023-04-09


時代は第一次世界大戦に突入したころ、何かと比較されてきたマーラーは、もうこの世に居ない。新時代の音楽である「春の祭典」は既に世に出ている。シュトラウスは独墺音楽の終焉を予感し、古き良き時代、旧世界の語法を駆使した音楽によって、頂点を極めようとした、そう思えてならない。“交響詩”ではなく、あえて“交響曲”と名づけたわけもここにあると思う。
 その後、二度目の大戦、ナチスとの対峙、第三帝国の崩壊を経て、彼が行き着いたのは「メタモルフォーゼン」であり「4つの最後の歌」である。まさしく19世紀の独墺音楽に幕を引いた作品だった。「4つの最後の歌」の「夕映えの中で」において、「アルプス交響曲」の終結部「夜」からの引用があるのはむべなるかな。「アルプス交響曲」における予感はここに成就されたのだろう。

 佐渡×新日フィルの「アルプス交響曲」は、管弦楽の極地にありながら、やかましくなくそれでいて巨大、身震いするほどの感動を与えられるものだった。独墺音楽の、交響曲の、未来を予言した曲として姿を現した。
 幸先よく完売公演でスタートをきった新日フィル。この1年、Wien Line(ウィーン・ライン)と名づけられた定期演奏会を期待しつつ見守りたい。

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