2023/9/3 金山隆夫×MM21響 「タラス・ブーリバ」とマーラー「交響曲第4番」
2023-09-03




みなとみらい21交響楽団 第25回定期演奏会

日時:2023年9月3日(日) 14:00開演
場所:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:金山 隆夫
共演:ソプラノ/柴田 美紀
演目:芥川也寸志/交響管弦楽のための音楽
   ヤナーチェク/狂詩曲「タラス・ブーリバ」
   マーラー/交響曲第4番


 ここ2・3年、定期演奏会にお邪魔しているアマチュアのMM21響。毎回、プログラムが意欲的なため足を運びたくなる。
 今日は「タラス・ブーリバ」とマーラー「交響曲第4番」という組み合わせ。そして、芥川也寸志の「交響管弦楽のための音楽」を幕開きに演奏した。

 「交響管弦楽のための音楽」は芥川が20歳半ばに書いた出世作。NHK放送25周年記念事業の懸賞募集で特賞となった作品。2楽章構成で10分程度の曲。
 2楽章の最初の一撃のあとのトランペットがカッコいい。そのあとの進行は何となく師匠の伊福部に似ている。

 狂詩曲「タラス・ブーリバ」は、ゴーゴリの小説『隊長ブーリバ』(原久一郎訳、潮出版社・2000年)に基づく標題音楽。3つの楽章「アンドレイの死」「オスタップの死」「タラス・ブーリバの予言と死」からなる。ウクライナの歴史を題材とし、民族解放のための闘いと自己犠牲を描写したもの。コサックの連隊長タラス・ブーリバと2人の息子たちの悲劇。
 ヤナーチェクの音楽は感動的に書かれているけど、曲想もリズムも次々と変転し、まとまりのある物語として聴かせるのが難しい。下手すると断片の寄せ集めのようになってしまう。各楽器の奏法も多彩で、高低音もギリギリ限界まで要求される。とにかく難易度が高い。
 今回の演奏でも部分部分が全体に寄与せず分断されたようになってしまったのは止むを得ない。プロでも取り上げにくいこの曲、アマチュアが挑戦したというだけで立派なものである。

 マーラーの「交響曲第4番」は、彼の交響曲のなかでも愛すべき作品のひとつ。マーラーの交響曲に関しては、誰しも「1番」か「4番」をとっかかりにして遍歴したあと、最後は「7番」「9番」あたりに落ち着くことが多いと思うが、長年、聴いていると再び「4番」とか「1番」に魅かれてくる。「2番」「3番」を含め前期の世界を改めて楽しみたいという思いである。前期4曲は、個人的にはハンス・ロットと切り離せない作品群と考えているから、その観点からも興味が増している。
 この「4番」、いつ聴いても良い曲である。天上の生活を描いた音楽としては上出来だと思う。

 MM21響は見たところ男女比半々、年齢構成は20代から60歳過ぎまで、各世代バランスよく揃えていて演奏水準も高い。新響などもそうだけどアマチュアでこれだけ達者だと技術的な未熟さを熱意でカバーするわけにはいかない。技術がしっかりしている分、リスナーはどうしても音楽の中身のほうに注意が行く。そうなると指揮者とオケとの相互関係が焦点となってくる。
 金山隆夫は決して凡庸な指揮者ではなく、その証拠にMM21響とは何度も共演している。お互い知り尽くして居心地がいいのかも知れない。が、オケにとってはあえて伸び盛りの若手指揮者を呼ぶことも新たな刺激が得られるのではないか、などと演奏を聴きながら不埒なことを考えていた。
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