2024-07-05
東京都交響楽団 都響スペシャル
日時:2024年7月5日(金) 14:00開演
会場:サントリーホール
指揮:ヤクブ・フルシャ
共演:ヴァイオリン/五明 佳廉
演目:ブルッフ/ヴァイオリン協奏曲第1番 ト短調 op.26
ブルックナー/交響曲第4番 変ホ長調 WAB104
「ロマンティック」
フルシャは此度の来日で2つのプログラムを2日間ずつ振った。ひとつは先日のチェコ音楽、もうひとつが昨日・今日の独墺音楽である。2つのプログラムを聴けば朧気ながらフルシャの現在地が分かろうというもの。
前半はブルッフの「ヴァイオリン協奏曲」、独奏の五明佳廉は日本生まれのモントリオール育ち。スズキ・メソッドで学び、ドロシー・ディレイに師事した。北米でキャリアを積み、今では舞台を世界に広げている。何十年も前から活躍しているヴァイオリニストなのに初めて聴く。
歯切れのいい音ながらここぞという場面ではヴィブラートを強めて情緒纏綿と歌う。ことに第2楽章がよかった。フルシャのバックも丁寧かつ強力で、やはりブルッフのこの楽曲は心に響く。
後半はブルックナーの「交響曲第4番」。ブルックナーの演奏は、いつも版の問題がついて回るが、正直、聴いているだけでは部分的に違和感が生じる程度でよく分からない。今回は「第4番」の3つの稿のうち最も一般的な2稿(1878/80年)をコーストヴェットが2018年に校訂した最新の版だという。
コーストヴェット版はハース版とノヴァーク版の中間的な選択といわれる。もともと2稿についてはハース版もノヴァーク版も大差ないようだから、このコーストヴェット版は聴きなれた「ロマンティック」となっていた。
フルシャのブルックナーは巨きくて立派。ダイナミックレンジが広く緩急は自然、パウゼも納得の呼吸だった。下手な小細工をせず音楽の流れに忠実な演奏。しかし、微笑がこぼれたり涙に濡れたりするほどではなく、感情が強く揺さぶられることはなかった。どこといって不満があるわけではないが、強固な設計に感心したものの、わずかに即興性の乏しさを感じたせいなのかもしれない。
都響の大野監督のあとはフルシャが適任ではないかと夢想してみた。今はアラン・ギルバートのほうが有力なのだろうけど、こと、ブルックナーの「第4番」に関して言えば、数年前に聴いたタケシより今日のフルシャのほうに軍配をあげたい。
コンマスは矢部達哉、トップサイドは水谷晃。先週同様のツートップで万全の体制。同一プログラムの昨夜の定期は完売公演だったらしい。今日も平日の昼公演としては良く入っていた。
セ記事を書く