2024-11-30
第15回音楽大学オーケストラ・フェスティバル2024
武蔵野音大・東京音大・国立音大
日時:2024年11月30日(土) 15:00 開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
出演:武蔵野音楽大学(指揮/現田茂夫)
東京音楽大学(指揮/広上淳一)
国立音楽大学(指揮/高関健)
演目:サン=サーンス/交響曲第3番 ハ短調
「オルガン付き」(武蔵野)
プロコフィエフ/交響曲第5番 変ロ長調(東京)
レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」(国立)
レスピーギ/交響詩「ローマの松」(国立)
2024年音大オケ・フェスの2日目。
武蔵野音大の「オルガン付き」でスタート。
指揮の現田は還暦をとうに過ぎているはずだが相変わらず姿勢はしゃきっとして若い。衣装も艶のある濃いグレーの上下を着込んでとてもおしゃれ。小泉和裕ほどではないけど下半身をほとんど動かさないまま指揮する。最近は後進の指導に尽力しているようで、指揮者としての登場回数が減っているが安定の指揮ぶりである。
第1楽章後半のアダージョにおける低音域のオルガンを背景に第1と第2ヴァイオリンが掛け合い、続くヴィオラ、チェロが絡む繊細さには陶然とするほど。一方、第2楽章後半のオルガンとともにオケ全体が結集して圧倒的な音圧で押し切る迫力も素晴らしい。聴きなれたサン=サーンスの「交響曲第3番」だが、やはり名曲である。
武蔵野音大のオケは良くまとまり好演。弦5部には何人かの先生方が参加し、各パートの後ろで弾いていた。微笑ましいかぎり。
2曲目は広上×東京音大のプロコフィエフ「交響曲第5番」。
過去、広上と東京音大によるベートーヴェン、J.シュトラウス、ストラヴィンスキーなどを聴いて、一度として失望したことがない。強く記憶に残る演奏ばかり。今日もその通り。
チェロ10挺、コントラバスはわずが5挺ながら地鳴りを伴うような重々しさで進む。スケルツォのメカニックなリズム感は小気味好く軽快そのもの。透明な美しさをたたえたアダージョのあと、荘重な主題とフーガ的な展開となり、長大なコーダは緊張感を孕む。各楽器のバランスがとれているためか大音量でも騒々しくならない。
音大で専門に学んでいるとはいえまだ20歳前後の若者たちからこれほどの音楽を引き出す。今、邦人の現役指揮者のなかで広上がナンバーワンであると考える所以である。
最後は国立音大を高関が指揮して「ローマの噴水」と「ローマの松」。
いずれも音で描いた絵巻物。オルガンと管楽器、打楽器が縦横無尽に活躍する。「ローマの松」ではバンタが加わる。トランペットが12本とは最多じゃないか。でも、決して虚仮威しのようには響かない。高関はいつものように節度をもって丁寧に音楽をつくる。「ジャニコロ」のナイチンゲールの鳴き声が途絶え、「アッピア街道」を遠くからティンパニが刻みつつ近づいてくるところはその典型、国立音大もよく高関の期待に応えていた。
音大オケ・フェスは、このあと明日のトリフォニーホールを残すが、錦糸町は遠いのでパスする。今年もお腹一杯で満足度の高いイベントが終わった。
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